第4話 呼吸のごとく
辺りが真っ暗闇となって何も見えなくなった森に、スキルのかけらの蒼白い光と、焚き火の炎のオレンジ色の光が、大木を照らし続けている。
夜が更けた。
共鳴の大木の下で、焚き火を囲んで佇むナリトとユフィリーがいた。
ユフィリー
「ワックスでの原型制作の知識はだいぶ理解が深まりましたかね。」
ナリト
「実は、あのスキルの御珠の映像は途中で終わっていたんですよね。」
ユフィリー
「なぜ、途中で終わっていたか分かりますか?」
ナリト
「どうしてかな」
ユフィリー
「ボクの予想では、ガウディの気遣いか、ただの天然ボケか、どちらかなんでしょうが、ボクとしては、気遣いだと信じたいですがね。」
「たぶんガウディはこんなことを伝えたかったと思うんです。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「知識を得ることも、食事を摂ることと同じ、腹8分目ってね。」
「欲張って知識を貰えばもらうほど、どんどんお腹が膨らんで苦しくなっていく。」
「どれからはじめてよいやら整理もつかなくなり、かえってやる気が出なくなります。」
「ちょっと物足りないぐらいが丁度良いってことを伝えたかったんですよ、きっと。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ユフィリーは立ち上がり、
「それではちょっとここで、実体験でもしてみましょうかね。」
「ボクの言う通りに実際にしてみてください。」
ユフィリーはナリトの前に立った。
「それでは、息をゆっくり吸っていきましょう。」
スゥ~
「ちょっちょっちょっと!」
「本当にやるんですよ。」
「吸いながら、読んでくださいね。」
スゥ~
「吸えるところまで、吸っていきますよ。」
スゥ~
「もう少し吸いましょう。」
スゥ~
「吐かないで!あとちょっと!」
「そして、もう限界ってところで、息を止めます。」
ピタッ
「そのまま、止めていてください。」
・・
「まだ、我慢できますか?」
・・
「もう少し、我慢してみましょう。」
・・
「我慢できなくなったら、吐きますよ~」
フゥ~~~
ユフィリー
「どうですか?」
「普段、なかなか呼吸を意識するなんてことはありませんよね。」
ナリト
「そうだね。当たり前すぎてね。」
ユフィリー
「でもこうやって、無意識にしていることに意識を向けてみると、見えないものが見えてくるんです。」
「息を吸ってばかりいたら、吸える限界がきましたよね。」
「そして、息を止めたままだと苦しくなってしまいました。」
「学ぶことも、呼吸をすることと同じなんです。」
「それでは視点を置き換えてみますよ。」
「酸素を知識と思ってくださいね。」
「知識(酸素)をたくさん吸って吸って溜め込もうとしても、吸える限界があります。
そして、その知識たちをそのまま維持していても、これまた苦しくなっていくばかりです。
これでは、新しい知識なんて吸えやしませんよね。」
「だから、知識を吸い込んだら、スキルに変えて吐き出してやるんです。」
「そしてそのスキルを、自分や仲間のために吐き出してあげれば、また新しい知識が吸えるようになります。」
「それを、繰り返していくのです。」
「呼吸のごとく・・当たり前にです!」
「それが、生かされているってことであり、生きているってことでもあります。」
「ナリトも、ここでもらった贈り物を貯めておくだけではなく、実際に活かしてくださいね。」
「というわけで今日もボクは、持っているスキルのかけらを吐き出しますよ~」
「ハァ~!」
ユフィリーは、息を吐くマネでおどけてみせながら、ナリトにスキルのかけらを渡した。
「これでボクはまた一歩、スキルマスターに近づけます(笑)」
ユフィリーからの贈り物
スキルのかけらを手に入れた!
彫金工具の入手に役立つ知識が刻まれた叡智である。
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「彫金工具以外の普段の生活用品を購入する時にも、この知識は活用できるんだ。」
来訪者
突然、空から何かが舞い降りてきた。
目玉がクリっとした丸い物体!?
二人の方へと近づいてくると、その姿がハッキリとしてきた。
なんと、首に大きな風呂敷を巻いたモモンガのジュエリルだったのだ。
そのモモンガはナリトへ封筒を渡した。
封筒を開けると、中に手紙が入っていた。
手紙
渡し忘れたモノがあったんじゃよ。
なんと、ガウディからの手紙だった。
ユフィリー
「噂をすれば、なんとやらですね。」
モモンガは、首に巻かれた大きな風呂敷包から、小包を取り出し、ナリトに渡した。
小包の中を開けると、” ワックスで出来た指輪の原型 ”が入っていたのだ。
手紙
そなたらに、行ってもらいたい所があるんじゃ。
共鳴の大木を中心に東西南北と、四方に森のパヴェ回廊が延びているのじゃが、
そなたたちには北の森のパヴェ回廊を進んで、” タートルバック ”という町に行ってくれないかのう。
そこにいる” レオナルド ”ってヤツに、このワックスの原型を渡してほしいのじゃ。
それでは、よろしく頼むぞ。
ナリト
「エッ!これで終わり?」
「ユフィリーは、レオナルドって知ってるの?」
ユフィリーは首を横に振った。
ナリト
「レオナルドがその町のどこにいるのか、どんな人かわからないんじゃ、渡せないでしょ。」
ユフィリー
「さっきの話なんだけど・・・」
「映像の事といい、この手紙といい、ボクの予想は外れかも・・・」
「どうやらただの天然だね、こりゃ。」
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