あなたの持っている糸鋸は、スキルを最大限に引き出してくれる自分に合った道具ですか?
自分に合っている糸鋸で作業しているのとしていないのとでは、切りやすさから切る精度まで、使い続ければ続けるほど糸鋸作業において歴然とした差が生まれてきます。
職人さんは長年の経験から使いやすい糸鋸がどういうものなのか知っています。
今回は職人さんの知識の詰まった糸鋸(手動タイプ)の選び方と使い方のコツを紹介したいと思います。
手作りアクセサリーを作ってみたいという初心者の方は必見です!
ぜひ自分に合った糸鋸を見つけて、スキルアップを目指していきましょう!
糸鋸の種類
糸鋸と言っても、手動タイプと電動タイプのものに分かれるのですが、地金(金属)を切ってアクセサリーを作っていく場合には、手動タイプの糸鋸を使って金属を自由自在に切り取っていきます。
手動タイプの糸鋸フレーム
出典:https://www.rakuten.co.jp/c-navi/
アクセサリー作りに使う糸鋸は、日曜大工で使うようなノコギリの形とは違い、弓型のフレームに幅1mmにも満たない細く繊細な鋸刃を取り付けて使用します。
そして、そのフレームには「固定型」と「自在型」の2タイプのものに分かれています。
固定型と自在型の大きな違いとは糸鋸フレームの自由度。
固定型はフレームが動かない、自在型はフレームの長さが自由に変えられるのが最大の特徴です。
そして固定型・自在型ともに、「懐の深さ」にいくつか種類があり、懐が深いほど長く地金を切り進めることができます。
しかし、懐が深ければ、その分、重くなっていきます。
懐とは弓の部分の刃とフレームまでの長さのことを言います。
固定型と自在型の糸鋸のメリット&デメリット
切りやすさ
固定型はフレームが一体型なので刃先のブレも感じずスムーズに切れる。
自在型は長い間使っているとフレームの長さを調節する金具部分がゆるくなったりして、地金を切っている最中に刃先がグラついたりすることがある。
重さ
自在型の方が重いので、透かし作業などで長時間の作業を考えると、特に女性の方は少しでも軽い固定型の方が扱いやすいだろう。
鋸刃の付けやすさ
固定・自在と糸鋸フレームは、鋸刃を挟み込む蝶ネジタイプのものが多いのだが、
穴に鋸刃を挿し込むタイプのものもあり、鋸刃の付けやすさはそれが一番付けやすい。
折れた刃を再利用できる
自在型は折れて短くなってしまった鋸刃の長さに合わせてフレームの長さを調節してあげれば、鋸刃の再利用ができます。
たしかに、よく折ってしまう方にはメリットなのですが、
作業効率という視点で考えると、わざわざフレームの調節をする作業に時間を費やすよりも、すぐに新しい鋸刃に取り替えて、作業をすすめた方がはるかに時間の効率は良いのです。
時間とお金のどちらを節約するかですね。
どちらの糸鋸を用意すればいいのか?
両タイプの糸鋸で作業をしてみた結果、最終的にボクは「固定型」を使っています。
そして理想は、懐の深さの違う糸鋸を2個以上持つことです。
彫金の場合、地金用とロストワックス用と別々の鋸刃を使うので、2つの糸鋸を持っているとわざわざ鋸刃の取り替えをしないでも作業がスムーズに行えるのでとても便利なんですね。
地金用としては、懐の深さ70mm~80mmの糸鋸フレームを用意すれば、オールマイティーなデザインに対応できてしまいます。
重さも軽めなので女性でも扱いやすい。
もう一つは懐の深さ100mm以上のものを用意すると良いでしょう。
普段はロストワックス用として使い、バングルなどで使う長い金属を切る場合には、地金用の鋸刃に付け替えて使用するのだ。
プロの職人が選ぶベスト糸鋸
地金&WAX兼用スイス製の糸鋸フレーム(Grobet)
穴に鋸刃を挿し込むタイプなので、鋸刃の付け替えがスムーズにおこなえます。
ポリマー素材のグリップでとにかく軽く、女性には嬉しい。
値段は他の糸鋸よりもちょっとお高めだが、価格に見合っただけの価値はある。
鋸刃について
地金用鋸刃の種類は、目が細かく厚みが薄いものから、8/0、7/0、6/0、5/0、4/0、3/0、2/0、0、1、2、3、4、5、6、7、8という順に番数があります。(メーカーによっては無い番数があります。)
金属の素材や厚み、切り取るデザインによって、使う目の細さを変えていきます。
通常、シルバーや金・プラチナ・銅・真鍮を切る場合には、3/0または2/0を使用します。
透かしや曲線などの細かい細工をする場合や、ステンレスなどの硬い地金を切る場合には、6/0以降の細い番数が切りやすいです。
通常1束が12本/1グロス144本入
メーカーによって、切りやすさが若干違ってきますが、スイス製の「バローベ」やドイツ製の「ヘラクレス」が品質もよく、切れ味も安定しているのでおすすめですが、最近では手に入れるのが困難な状態です。
最近出回っているのが、スイス製のSUPER PIKE(スーパー・パイク)や、ドイツ製の「ゴールデンアイ」や「アンチローブ」などです。
実際に使い比べて、自分に合う鋸刃のメーカーを探してみてください。
アクセサリー作りで使う場合、
6/0と3/0と0の3種類を持っていれば、事足りるでしょう。
【動画で覚える】糸鋸の正しい付け方
糸鋸刃のつけ方【地金/引き切り】
糸鋸フレームと鋸刃が用意できたら実際に切っていくわけですが、木工用ののこぎりとは違い、糸鋸フレームに鋸刃を装着しなければいけません。
それも付け方がちゃんと出来ていない糸鋸では、まったく切れず役に立ちません。
まずは、糸鋸の付け方を動画を参考に正しい糸鋸の付け方を覚えてください。
ポイント
- 刃の向き
- 鋸刃の張り具合
この2つの付け方のポイントをしっかりとおさえていればOKです。
糸鋸の上手な使い方
地金を切る時に使う糸鋸の使い方って以外と単純な作業なので、あまり考えもせず無意識に動かしているかと思います。
でも、実は何度も何度も糸鋸を使い続けていくと、あることに気付くのです。
このコツさえ掴んでしまえば、糸鋸の刃を何度も折らずに地金をスムーズに切れるようになります。
まずは、こちらを見てください。
左側の糸ノコの刃はまだ使っていないもの、右側の刃は使った後のものです。
右側の刃が弓のようにしなっていますよね。
どうしてこうなるかと言うと、さあ、なんでだと思います?
・・・・・・
実は、糸鋸を引く時に、切ろうという意識が強いのか、地金に押し当てすぎながら糸鋸を引いて切ったのが原因なんですね。
要するに、力の入れ過ぎなんです。
糸鋸ってすごく細くて繊細なので、負荷が掛かりすぎると曲がったり、終いには折れちゃいます。
糸鋸を折らないように地金を切るためのコツ
持ち手と押さえ手の力のかけ方が大事。
持ち手とは、糸鋸を持ってる手のことです。
通常、利き手に持ちます。
押さえ手とは、地金を押さえている手のことです。
持ち手は・・・
糸鋸のグリップを軽く握ります。
そして、ノコ刃を地金に当てて下に引き始めるときに、地金に刃を押し当て過ぎないように注意して上下させていく。
ギザギザの刃の部分だけが当たっているような距離感を保ちながら引いていくこと。
上に戻すときは地金に当たらないスレスレを通る。
余分な力を抜いて、この感覚で糸鋸が上下に動かせるように作業していく。
押さえ手は・・・
しっかりと地金を押さえます。
ノコ刃の上下運動中に刃が地金に引っかかって、地金がバタバタと動かないようします。
地金部分の手前を親指、奥を人差し指や中指で押さえると安定します。
地金が遊ばない程度の押さえつける力加減が必要です。
糸鋸が折れてしまう原因とは?
ノコ刃の上下運動に前後左右に傾むく力が加わると・・・
糸鋸を上下した時に、刃が地金に軽く触れている感覚を確かめよう。
地金に押し当てすぎたり、前後左右にブレながら上下運動していると、ノコ刃は簡単に折れてしまいます。
慣れないうちは一回の上下運動は小さく、刃が地金に軽く触れている感覚を確かめながら、刃先を地金に対して90度の角度にキープしながら、上下に動かしていきましょう。
慣れてきたらその運動を大きく素早くしていきます。
その時も、力は入れ過ぎないように注意です。
地金がバタバタと遊びながら糸鋸を引くと・・・
地金が不安定の状態のまま、切り進めようとしていないか?
押さえ手でしっかりと地金を押さえずに糸鋸を動かしていくと、上下運動がスムーズにいかずにノコ刃が地金に引っかかりやすくなります。
そして、引っかかった瞬間に刃先に負荷がかかり折れてしまうのです。
地金を押さえている手は、地金がバタバタと動かないようにしっかりと押さえておきましょう。
糸鋸で真っ直ぐに切るためには
糸ノコが真っ直ぐ切れない、グラグラと波打って切れてしまうのはなぜか?
それは、雑念ですね。
上手く切ろう、曲がらないように切ろう、早く切ってやろう、切るのたいへんだなとか、いろんなことを考えながら動かしていると曲がっていきます。
今切り出している少し先の切り取りライン(ケガキ線)を見据えて、雑念は棄てて、ただひたすら肘を視点に腕を上下に動かすことのみに集中します。
そして、ちゃんと切り取りラインに沿って糸鋸が切れていれば、その状態をキープします。
とにかく糸鋸の持ち手を通して、刃が地金に触れている感触を意識しながら、
余分な力を入れずに一定のリズムと規則的な動きが出来ることが、糸鋸上達のカギです。
切る作業で使う糸鋸以外の道具
すり板&クランプセット
地金&WAX兼用溝なしの①テーパー型、溝ありの②V溝型と③平溝型の3種類。
透かし模様を入れる時など溝があると作業がやりやすい。
どれを使うかは好みだが、ボクは「溝あり」を使っています。
机の上では糸鋸が引けないので、このスリ板を机の端に装着して出っ張り部分を作り出し、その上に地金を置いて糸鋸で切っていきます。
溝ありと溝なしのものがあり、溝ありのものは溝にまたがせて地金を安定して固定させながら切ることが出来る。
糸鋸フレームと鋸刃、そして、このスリ板があれば、地金を切ることが出来るのだ。