ワックスでのアクセサリーの作り方とは?
ろうそくのような硬さのワックスという素材を切り出したら、「削ったり」「彫ったり」「くっつけたり」「盛り付けたり」して、形を整えていきます。
地金と大きく違う点は、盛り足すことができることで、削り過ぎや割れた場合でも修正・やり直しをすることができます。
完成したワックスデザイン(以下【ワックス原型】と呼びます)は、キャスト(鋳造)をします。
キャストをするとそのワックス原型の形のまま、シルバーや金、プラチナなどの金属にすることができます。
最後に「石留め」「仕上げ研磨」をして、アクセサリーが完成します。
これが、ワックスから作り上げていく大まかな作業の流れとなり、これを ”ロストワックス製法” と呼びます。
それでは、詳しく工程を見ていくことにしましょう。
ロストワックス製法の全行程
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1原型を作る(ワックス原型制作)
ワックスというロウソクのような素材を、削り出したり溶かして盛り付けたりして指輪のデザインにしていきます。
ワックスで出来たデザインはワックス原型と呼びます。
step
2鋳造する(キャストする)
湯道をつけて固定
まずは、スプルーと呼ばれる丸棒タイプのワックスを指輪につなげワックスが流れ出る通り道「湯道」を作ります。(ちなみに指輪とスプルーを繋げた部分を湯口と呼びます。)
そして、この湯道の付いた指輪をゴム台に固定します。
埋没&脱泡
埋没
ゴム台に立てた指輪に筒状のステンレスリング(フラスコ)を被せたら、その囲われた筒の中へドロドロに溶けた石膏を流し込んでいきます。
脱泡
そして、真空脱泡機を使って、石膏に含まれる気泡を取り除いていきます。
脱ロウ&焼成
脱ロウ
石膏が固まったら、電気炉で加熱してワックスを溶かし出します。
すると、石膏には指輪の形そのままの空洞が出来上がります。
(ワックスが溶けて無くなる「ロストする」ことからロストワックスと呼び名がつきました。)
焼成
その後に鋳型(いがた)にするために、この石膏を高温で焼き固めていきます。
鋳造(キャスティング)
ドロドロに溶かした金属(シルバー925、18金、プラチナ900など)を石膏の鋳型の空洞に流し込みます。
指輪の空洞に流した金属が隅々まで行き渡るように、加圧や吸引または遠心力を加えます。
鋳型から取り出す
石膏の鋳型をくずして、流し込んで固まった金属の指輪を取り出していきます。
こいつをキャスト吹き上がり品と呼んでいます。
鋳造が完了
キャスト吹き上がり品の湯道を切ったら、ザラザラした表面をなめらかにするためにバレル研磨をします。
これで作りたい金属素材が1つ出来上がります。
同じデザインのものを2個以上複製したい場合
step
2A型用の原型を用意する
あなた自身がやるべき作業専門の業者さんに任せてもよい作業
※業者にキャストを出した延長で任せることもできます。
型用の原型は、
- 直接地金を加工して作り出していくか
- ロストワックス製法でキャストして作り出していくか
この2つのパターンのどちらかとなります。
どちらで作るにしろ、型用の原型はシルバーで作ります。
そして、このシルバーの原型を使って「ゴム型」を取っていきます。
キレイなゴム型が出来るように、シルバー原型の表面は1000番まで磨いておきます。
step
2B型取りする
型取りの準備
表面を1000番まで磨いた状態のシルバー原型に、湯道という金属棒と金属の三角錐を取り付けます。
原型を埋め込む
アルミの型枠にシリコンゴムを敷いて、その上に湯道付きの原型をセットします。
そして、原型をサンドイッチするようにシリコンゴムを被せます。
シリコンゴムを焼き固める
ホットプレス機にアルミ型枠を挟んで熱と圧力をかけて、シリコンゴムを焼き固めます。
プレス後、アルミ型枠を冷まします。
ゴムを切り開く
アルミ型枠から原型入りのゴム型を取り外し、三角錐を外します。
ゴム切り用のメスを使って、ゴムを上下2つに切り分けていきます。
デザインが複雑になればなるほどカットが難しくなります。
切り分けたシリコンゴムから原型を取り外してまた重ね合わせたら、原型を忠実に再現したゴム型の完成です。
ワックスを流し込む
ワックスポットという機械を使って、ゴム型にワックスを流し込みます。
ワックスポットの射出口に、ゴム型の三角錐の穴部分を押し込むと、勢いよく液状のワックスがゴム型内の空洞に流れ込みます。流れ込んだワックスは、すぐに冷めて固まります。
ゴム型を開けて抜き取れば、ワックス原型の完成です。
同じように、ゴム型にワックスを流し込む作業を繰り返せば、いくつでもワックス原型が複製できます。
ちなみにゴム型を作るために使った原型は、ゴム型が劣化した時にまた同じ原型のゴム型が作れるように大切に保管しておきましょう。
鋳造(キャスト)する
同じ素材で同じデザインのアクセサリーを量産したい場合は、複製したワックス原型たちをこのようにツリー状に並べれば、まとめて何個も鋳造(キャスト)できる鋳型が作れます。
例えばこの鋳型にシルバーを流し込めば、同じデザインのシルバーアクセサリーが量産できるというわけです。
金やプラチナを流せば、その素材のアクセサリーが量産できます。
ゴム型さえ作ってしまえば、個数も金属素材も自由に量産することができるようになるわけです。
step
3石留め・仕上げ研磨
あなた自身がやるべき作業専門の業者さんに任せてもよい作業
※デザインや予算によっては、専門の業者さんに任せてもよい。
鋳造のままでは指輪の表面はザラザラなので、まずはバレル研磨をしていきます。
そして、その指輪の最終的な仕上り状態になるまで研磨を繰り返して、商品としてのクオリティーに仕上げていきます。
石留めのあるデザインは、仕上げ研磨後に石留めしていきます。
ロストワックス製法の中であなたが力を注ぐべき作業の優先順位は?
第1位:ワックス原型制作
第2位:仕上げ研磨
第3位:キャスト
第4位:ゴム型取り
どこまで自分が手を出すべきか?
ロストワックス製法の一連の工程は、
あなた自身ですべて作業することができます。
しかし、
ロストワックス製法の工程を見てもらったとおり、
特に鋳造の工程は出来るまでに色々と下準備が必要です。
機材を揃えるまとまった費用が必要であったり、
機材の設置場所を確保したり、
機材の操作方法、
うまく鋳造できるようになるまでの試用期間などを考えると、
個人で鋳造をやっていくのは、あまり賢いやり方とは言えません。
どうしても1から自分が手がけるアクセサリーを作りたいというこだわりがあるのなら別だが、
あくまであなたはアクセサリーを作るデザイナーであれば良い訳なので、
ワックスであなたらしい独自のデザインを生み出していく作業のほうにパワーを注いだ方が良いと思います。
時間には限りがあります。
誰がやってもあまり出来栄えに差が出ないような作業は、その道のプロにお任せすればいいわけだし、
お金で時間を買ったと思って、
その買った時間をあなただけしか出来ないことに費やした方が得策だと思いますよ。
ワックス原型制作を極めていこう!
あなたが次々とワックス原型を作り出し、
キャストは専門の業者に任せ、
そしてキャストされてきたアクセサリーをあなたが最後に石留めや仕上げをする。
これが、最適な作業の流れである。
ワックス原型制作では、
- 切る
- 削る
- 彫る
- くっ付ける・盛り付ける
- 磨く
- 宝石を留める
- 仕上げる
と、この7つのスキルを極めていく。
切る・削る・宝石を留める・仕上げるは、地金製法とほぼ一緒のスキルとなり、
知識に基づいた正確なスキルを身に付けなくてはならない。
そして、ロストワックス独自のスキルとなる
彫る・くっ付ける・盛り付ける・磨くは、
頭の中にイメージした立体デザインを道具を使って体現できる感性や感覚が重要なスキルとなってくる。
とは言っても、地金に比べればスキルの習得レベルは低い。
クオリティに個人差は出るが、時間さえかければ、誰もが完成まで漕ぎつけることができるのだ。
ワックス原型を上手く作るためのロードマップ
step
1デザインを用意する
あなたのステージ(力量)に合わせて、デザインを用意してみよう。
見習いステージ【実物を用意する】
実物のアクセサリーを見ながら、そっくりそのままのカタチになるように作り出していく。
独り立ちステージ【3面図を用意する】
まずは目で見て実物に触れて、自分の感覚を確かめながら3面図に書きおこし、3面図だけを見てデザインを立体的にイメージしながら作り出していく。
3面図になるべく正確な寸法も書き添えておくことで、大きさを確認しながら作ることができる。
相手に見せる3面図ではないので絵の上手い下手は気にしない。何度見ても自分にとってその絵が同じ感覚で見れれば問題ない。
平面の図を見て、頭の中でその画像を立体的にイメージ出来る脳を作り出すための訓練をしながら作り出していきます。
クリエイターステージ【頭の中に用意する】
ウェブ画像や雑誌の画像を参考に立体を想像して、そのアクセサリーデザインを作っていく。
出来ればワックス原型を作り終えた後に、出来栄えを比較するために実物を確認すると良い。
step
2作り方を選ぶ
デザインや今のあなたのスキル能力を考えて、以下の3つのうち1番完成度が高くなる自分の得意なスキルパターンを選択する。
あなたの得意なスキルパターンはどれ?
- 削り出して作っていくパターン
スパチュラ・ヤスリのスキルがメインとなる作り方 - パーツとして分けて作り、最後に組み立てていくパターン
スパチュラ・ワックスペン・ヤスリのスキルをまんべんなく使う作り方 - 盛り付けて作っていくパターン
ワックスペン・スパチュラのスキルがメインとなる作り方
上達ポイント
得意とするスキルを身につけて、そこから作り方を組み立てていくと作りやすいぞ。
step
3決まっている条件の部分から順番に作り始めていく
ワックス素材をデザインが取れる大きさに切り分ける
板やボックスやチューブ型と、販売しているワックスの素材の形は決まっています。
その決まった形から作りたいデザインが作りやすそうな素材を選び、切り分けていきます。
例えば、リングならリング幅に沿ってチューブワックスを切るとか、ペンダントなら大きさや厚みに合わせてボックスワックスを切り分けるなど。
機能的に必要な部分から作り始める
指輪なら作りたい号数が決まっていますので、まずはリングサイズを合わせる作業から始めます。
さらに宝石が入るなら、宝石の形や大きさに合わせた石座が必要ですよね。
このように作りたいデザインの機能的に必要な部分はどこなのか見つけ、そこから作り始めていきます。
デザインの輪郭
機能的に問題ない形になったら、はじめてここでデザインの輪郭(フォルム)を作り出していきます。
削り出したり盛り付けたりしながら、ここでさっくりとしたデザインの形を完成させます。
細部のデザイン
さらに細かく模様や装飾などを入れて、作り込んで仕上げていきます。
ワックスで作る上でのメリット・デメリット
メリット
- ワックス原型制作は地金製法に比べスキル習得レベルが低く、感覚的に作り出すことができる。
- 立体的、造形的、動きのある形状のものを作るのに適している。
- 盛り付けによる修正ができるので、切り過ぎ・削り過ぎてもやり直しができる。
- 地金製法と比べ、作業音が静かなので、集合住宅でも周りに気に使う心配がいらない。
- 地金製法と比べ、道具の初期投資が安く済む。
デメリット
- ワックス原型を鋳造して貴金属にするため、地金に比べコストと時間を要する。
- 繊細で緻密な石留めアクセサリー制作には不向きである。
- 自分で鋳造する場合、鋳造設備に関する知識や技術、まとまった導入資金が必要となる。