ワックス原型制作で使う19の必須道具

ワックス原型を作るときに使う道具が刻まれたスキルのかけらである。

ひとつの道具をとってもいろいろな種類があり、あなたが初心者なら尚更どれがいいのか迷ってしまうだろう。

そこで今回は、ボクが実際に使っているこれがなければ仕事にならない必須の道具たちを紹介します。

ここで紹介している道具を揃えれば、ほとんどのデザインに対応したワックス原型を作ることができる!

それでは早速、指輪のワックス原型制作の流れに沿って、実際にどのような道具がどこで使われているのか詳しく説明しましょう。

指輪のワックス原型が出来るまでの作業工程

切り出す幅を決める

デザインに必要な幅を決めたら定規で測り、スプリングコンパスまたはカニコンパスでワックスの全周に渡り、けがき線(下書き線のことを言う)を入れます。

スプリングコンパス

ケガキとコンパスが一緒になった道具。
スプリングの力でコンパスが開くのをネジで微調整して、リングの幅などを正確な寸法でけがくことができます。
円の最大直径の違うものが色々と出ています。

ステンレス定規

0.5mmと1mmの2通りの単位で長さを測ることができるステンレス製の定規。
長さ15cm定規の他に30cmも持っていると便利。
100均のものでも代用可。

ワックスを切り出す

机にすり板を固定したら、糸鋸フレームワックス用ノコ刃を取り付け、けがき線を目安にワックスを切り出します。

すり板クランプセット

①溝なしのテーパー型、②溝ありのV溝型、③平溝型の3種類。
透かし模様を入れる時など溝があると作業がやりやすい。
どれを使うかは好みだが、上画像のように私は「溝あり」を使っています。

糸鋸フレーム

75mm/100mm/120mmなどフレームの深さが違うものがあるが、75mmが基本。
ノコ刃を付け替えれば、地金用・ワックス用と両方に対応できる。
2本用意すれば、わざわざ刃を取り替えずに使えて作業効率がUPできるぞ。

固定式のほか、ノコ刃の長さに対応できる自在式もある。

この画像の糸鋸フレームは穴に鋸刃を挿し込むタイプなので、鋸刃の付け替えがスムーズにおこなえます。
ポリマー素材のグリップでとにかく軽く、女性には嬉しい。

ワックス用糸鋸刃

目詰まりしないように刃がスパイラル状になったワックス専用のノコ刃。
メーカーはどこでもよく、刃の細かさは中間のもの(No.3)を使います。
滅多に折れることはないので、1束(12本入)で事足ります。

リングサイズを整える

ワックスの穴はもとから8号サイズなので、8号以上21号まではNo.H37 ワックスリーマーを使い、21号以上はNo.H141 ワックスリーマー太径を使い、8号未満は穴なしワックスに穴を開けてから、NoH149 ワックスリーマー細径を使って希望の号数まで削ります。
サイズ棒で号数を確認しながら削っていかないと、削り過ぎてしまうぞ。

ワックスリーマー

ハープ社のものは3種類に分かれています。
必要なサイズのものが削れるリーマーを用意しよう。

No.H37 ワックスリーマー
太さは3番から22番のサイズ相当分。目盛り付きのものがあります。

No.H141 ワックスリーマー太径
太さは、20番から40番のサイズ相当分。目盛り付きのものがあります。(No.H141-SZ)

NoH149 ワックスリーマー細径
太さは、マイナス13番から7番のサイズ相当分。

サイズ棒 & リングゲージ

サイズ棒、リングゲージともに1号~30号まで測れます。
サイズ棒は既存の指輪のサイズ計測、地金・ワックス原型制作時のサイズ計測に使用します。

削り出す

粗目のヤスリを使って、希望の厚み・幅近くまで削っていく。

造形的なリングなどは、見栄えを変えずに重さを軽くするために、指輪の裏側を削ります。
これを”裏抜き”と言いますが、このときに指輪の厚みを測るためにスライディングゲージを使います。

プロペラヤスリ(半丸タイプ)

両頭が使える半丸タイプの鉄工ヤスリ。
15mmくらいの幅があるもの。
100円ショップの一番粗いヤスリでも代用できます。

スライディングゲージ(WAX用)

ワックスの厚さを測るための道具。
指輪の裏抜き(指輪の内側の厚みを削る作業のこと)で厚さを測る時に重宝します。
挟む先端部分が細く尖っているメタル用と、傷つかないように先端が丸くなっているWAX用の2種類ある。

デザインをけがく

油性ペン→カニコンパスを使って、ワックスにデザインをけがいていきます。

デザインを削り出す

精密ヤスリを使って、デザインの輪郭に削り出していく。
デザインに合わせてヤスリの形状を使い分けていきます。

精密ヤスリセット

平・半丸・丸・三角・角・鎬・先細・楕円・刀刃・腹丸・両甲丸・蛤・笹葉などがあります。
まずは平・半丸・丸・角・三角・刀刃は揃えておきたいところですね。
あとは使いながらこの形状あると便利だなと思ったものを買い足してください。

粗さは中目ぐらいが地金・WAXともに使えて、細かなデザインを研磨するのにベスト。

切削ビット(ラウンド)

地金に穴を開ける時や、皿もみする(地金に石座となる穴を開けること)時に使うリューター用のラウンド型切削ビットです。
地金を切削するため、刃が消耗してしまうので常にストックは用意しておいたほうが良いでしょう。
刃がこぼれてしまったものをワックス切削用として使用すると効率的です。
サイズは、0.3~3.0mmまで0.1mm毎、以降3.1/3.2/3.3/3.5/3.7/4.0/4.2/4.5/4.7/5.0mm
ビット軸径は、2.34mm

用意しておきたいサイズは、直径0.5mm/1.0mm/1.3mm/1.5mm/2.0mm/2.5mm/3.0mm/3.5mm/4.5mm/5.0mm

切削ビット(ドリル)

地金に穴を開ける時に使うリューター用のドリル型切削ビットです。
石座の光穴や、透かしデザインの切り出しの穴開けなどで使用します。
地金を削って刃がこぼれてしまったものをワックス切削用として使用すると効率的です。

ドリル刃のサイズは、0.5/0.6/0.7/0.8/0.9/1.0/1.1/1.2/1.3/1.4/1.5/1.6/1.7/1.8/1.9/2.0/2.1/2.2/2.3mm
用意しておきたいサイズは、直径0.5mm/0.8mm/1.0mm/1.4mm
ビット軸径は、2.34mm

デザインを整えていく

スパチュラを使って、細かな部分のデザインを整えていきます。
デザインに合わせて、スパチュラの形状を使い分けます。

スパチュラ

実際は、この種類を全部使いこなすことはまずない。
使う形は平刀・針・耳かき型の3種類のみ、先端の形や大きさをカスタマイズして使用します。
カスタマイズ方法はメンバーサイト内で紹介しています。

表面をキレイに磨く

スポンジ研磨材耐水ペーパーの順番で、ワックスの表面を磨いていきます。
#1000以上の耐水ペーパーに、お水を含ませながら磨くと滑らかな表面に磨けます。

スポンジ研磨材

制作の最終段階でワックスに付いた小キズを消す時に使います。
3Mの番手(目の粗さ)は、ミディアム(#120~#180)/ファイン(#240~#320)/スーパーファイン(#320~#600)/ウルトラファイン(#800~#1000)/マイクロファイン(#1200~#1500)の5種類。

あの台所をキレイにするメラニンスポンジでも代用できるぞ。

耐水ペーパーヤスリ

地金研磨の時はそのままで、WAX研磨の時は水をつけて磨く時もあります。
#180/#340/#320/#400/#600/#800/#1000/#1200/#1500/#2000(番手の数字が小さいほど目が粗い)
地金&WAXと両方で使うので、#180、#600、#1000、#1500、#2000あたりを用意しておくと良いぞ。

表面をなめらかに仕上げる

綿棒にワックスフィニッシュを塗って表面をなめらかに仕上げることができますが、昔ながらの方法では艶出しにストッキングを使って磨いています。

細かなキズやヤスリ目などが残っていたりすると、それがそのままキャストされてしまいます。

キャスト後の貴金属となったキズは、消すのにとても労力がかかる作業なので、ワックスの時点で余計なキズをしっかりと消しておけば、キャスト後の作業軽減につながります。

ワックスフィニッシュ

WAX用
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ワックスの細かな傷を消して、ツヤを出す仕上げ液。
絶対に必要という道具ではないが、細かなキズが簡単に消せるのでなかなか便利です。
ツヤを出すだけなら、要らなくなったストッキングで代用できます。

ワックス原型の完成

こうしてワックスの原型が完成していきます。

次にこの原型を金属にするためにキャストするんですが、その前にこのワックス原型がシルバー925・18金・プラチナ900など、
キャストする素材になった場合にどのくらいの重さになるのかを調べておきます。

その重さを割り出すために、デジタルスケールでワックスの重さを測るのです。

デザインに影響しない程度にワックスをギリギリまで削り出すことで、金属の使用する量を極力減らしてコストダウンを図ります。

デジタルスケール(携帯タイプ)

地金やワックスの重さを量る以外にも、宝石のカラットを調べる時にも使います。
以下の3点があるデジタルスケールを購入すること。

  1. 0.01g単位で計測できるもの
  2. ct(カラット)測定が出来るもの
  3. 容器を置いてその重量を省いて0gから計測できるもの

ワックスペン

ワックス作業に欠かせない一番大事な道具です。

万が一、制作途中でワックスが割れてしまった場合に修正する道具として使ったり、造形的なデザインを制作するときの盛り付け作業などにも大いに活躍するぞ。

こちらはUSBタイプの温度調節機能つきワックスペンです。

リューター

ワックス原型製作では、リューターがなくても手でコツコツと彫っていくことができますが、大まかな輪郭まで一気に削り落としたい場合など作業効率を考えると、やはりリューターがあると便利ですね。

結局のところ、ワックスを金属にキャストしたものを仕上げ研磨する場合など地金製作で必須となる道具ですので、彫金に使える機能・性能を備えたリューターを用意しておこう。

 

これさえ揃えればワックス原型製作は出来る

必須道具

  • スプリングコンパス
  • スケール
  • スリ板&クランプ
  • 糸鋸フレーム
  • WAX用ノコ刃
  • WAXリーマー
  • サイズ棒&リングゲージ
  • プロペラヤスリ(半丸)
  • スライディングゲージ
  • 精密ヤスリ
  • 切削ビット(ラウンド)
  • 切削ビット(ドリル)
  • スパチュラ
  • スポンジ研磨材
  • 耐水ペーパーヤスリ
  • ワックスペン
  • デジタルスケール

仕上げ研磨で必須の道具

  • リューター

あると便利な道具

  • ワックスフィニッシュ