ミル打ちは婚約指輪や結婚指輪でよく使われる人気のデザインですよね。
シンプルなデザインのアクセサリーに、ひとたびミル打ちを入れるだけで、そのアクセサリーは上品で落ち着いた雰囲気を併せ持つお洒落なアクセサリーへと変貌します。
アンティークジュエリーのものにも多く見られるように、婚約指輪や結婚指輪に限らず普段使いとしても、ミル打ちデザインのものを1つは持っておきたいところです。
そこで今回はそんなミル打ちについて、制作側の視点も交えつつ、詳しく解説してみたいと思います。
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ミル打ちとは?
リング表面の両側に丸い粒が連続して並んだデザインのものを見たことありませんか?
あれが、「ミル打ち」です。
(ミル模様とも言います。)
海外ではミルグレインと呼ばれ、
ラテン語でミルは "千"、グレインは ”穀物の粒” を表し、ミルグレイン=「千の粒」と言う意味になるそうです。
そういえば、フランスのお菓子「ミルフィーユ」もミルがつきますよね。
ちなみにこちらは "千枚の葉" と言う意味です。
「千」には、子宝・永遠・長寿という縁起の良い言葉のイメージがあって、結婚指輪や婚約指輪のデザインに多く使われると言うのも納得がいきますよね。
ミル打ちを入れる効果(メリット&デメリット)
インパクトと繊細さ
アクセサリーの輪郭部分に入れることが多く、そのデザイン自体を際立たせる効果があります。
他にも、シンプルでのっぺりとした平面デザインにミル打ちの立体感をアクセントとして入れることで、そのアクセサリーは引き締まった印象へと変わります。
少し幅が太めのリングなどに入れると細く見えるので、「太めのリングを付けたいんだけど」と、指の太さが気になるって方におすすめ。
上品な輝きと可愛らしさ
連続で並んだ丸く輝いた粒が、まるで宝石を留めたかのように光の反射でキラキラと輝き、そしてこの小さな可愛らしい丸い粒々のデザインが繊細な印象を与えてくれるのだ。
販売者側にもメリットがあるデザインなのだが、それはここでは内緒ということで。
(感の良い方は分かるかもしれませんが)
使い続けるとアンティーク調に
丸い粒の凹凸が連続で並ぶことで光が拡散されて、細かな傷などは見えづらくなる。
使い込んだシンプルな平打ちリングとミル打ちリングを見比べてみると、平打ちリングは平面部分にキズが付くとどうしても目立ってしまう。
逆にミル打ちしたリングは、丸い粒状のデザインのおかげでキズがかえって良い具合のUSED感を醸し出し、アンティークジュエリーの風合いへと変貌していくのだ。
リングのサイズ直しが難しい
全周ミル打ちされたリングのサイズ直しは、隙間なく並べられたミル模様のデザインを崩してしまう恐れが出てくるために、通常はサイズ直しは不可となっているお店が多い。
直してくれるところもあるが、費用は通常のサイズ直しよりも高めとなるだろう。
全周ミル打ちの指輪を購入する際は、しっかりとリングサイズを測ってから購入することをオススメします。
ミル打ちの打ち方次第で雰囲気は変わる
ミル打ちを入れる技法は、大きく分けて3種類あります。
手打ちでミル打ちする技法
ミルタガネとおたふくという彫金道具を使って、職人が一つ一つ打ち込んでいく方法。
大きさや間隔、深さが均等になるように丸い粒を打ち込んでいくので、職人の技量が問われます。
熟練した技術を持った職人が加工すれば、1番美しく輝いたミル打ちが出来上がります。
型押しでミル打ちする技法(手押し)
「歯車ミルタガネ」というミル打ちしたような型が付くローラー型の道具を、地金部分に押し付けて転がしミル打ちを施していく方法。
一つ一つ打ち込んでいくよりも作業効率は良いのですが、硬い金属に押し付けて打刻するのでミル打ちの深さが浅くなりやすい。
極小のミル打ちを入れるときなどに使用する。
型取りでミル打ちする技法
ロストワックスまたは地金で、ミル打ちを施したデザインのアクセサリーを作り、それを型取り→鋳造→量産する方法。
鋳造されたものを使うので、既にミル打ちが施されていることとなる。
腕の良い原型師や3D CADを使って、ミル打ちがきれいに施されたワックス原型を作り、鋳造したもののミル打ち部分にスなどの不良箇所がなければ、3つの中で作業効率が1番良い。
3D CADで彫ったものなどは、ミル打ちの形や大きさも均一で美しいのだが、手で打ち込んだ美しさとは違い無機質な感じになってしまう。
しかし制作に携わる者でなければ、どちらが職人の技でどちらがCADで彫ったものなのかは分からないだろう。
鋳造と量産についてはこちらの記事を参照してください。
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ミル模様はなぜ魅力的なのか?
手打ちのものか、鋳造ものか、どちらが良いミル打ちなのかなんてことは、販売者側が決めることではない。
買う側がそのデザインを見て、「これ、良い!!」って感じたモノを選んでもらえればそれで良いと思う。
しかし、手打ちで入れたミル打ちの方がやはり素晴らしいというのも事実だ。
個人的に制作者側の作る苦労などを考えてしまうと若干「手打ち」をひいき目に見てしまいますが、やっぱりそれでも熟練の職人が打つミルは機械の精密さとは違う、独特の美しさを感じます。
人間が作るものは見た目まっすぐな直線に見えても、じつは正確に測ってみると歪んでいるんです。
機械のような寸分違わず作り出すことは、人間にはまず不可能なことなのです。
でも、そのまっすぐに作ろうとする中での微妙なズレを、あなたは無意識に感じ取っていたりするのです。
それが感覚的にそのデザインを、美しく感じさせたり、可愛く感じさせたりするわけなのです。
「このデザインには味があるな」と言われるような、そんな作り手の思いが感じれる作品が作れるよう日々努力しないといけないですね。