彫り留めとは、地金に穴を開けて、その穴に石を入れて、穴の周りの地金から爪となる部分を彫り起こして留める技法です。
地金表面よりも石があまり飛び出さないため、デザインのフォルムを崩すことなく、見た目の美しさや商品価値を引き上げることができます。
「爪留め」「彫り留め」「爪・彫り以外の石留め」と3つの石留めの中で唯一、
すでに出来上がっているアクセサリーに石留めができるのが最大の特徴です。
ロウ付けで石座・石枠・爪を立てる必要もなく、この彫り留めならばワックス原型制作・地金制作ともに石留め部分を気にせずに比較的自由度の高いデザインを作り出すことができます。
その反面、完成品に石留めするため、失敗が許されません!
彫り留めを成功させるためには
地金に石をおさめる穴開けスキル(業界用語では『皿もみ』と言います)
この皿もみが正確な位置に石の形どおりに開けられないことには石は留まりません。
彫り留めデザインの良し悪しを左右するタガネスキル
毛彫りタガネと片切りタガネを思い通りに扱えるようになれれば、見た目のキレイな彫り留めが完成できます。
この2つのスキルが自分のものになるまでしっかりと修練する必要があります。
それでは彫り留めスキルを学ぶ前に、まずはどんな彫り留めがあるのか見ていきましょう。
彫り留めの種類
玉留め(ナナコ留め) 基本形 ⇒ 粟留め 発展形
玉留めは、石の淵に球ぐり(ナナコタガネ)で地金の玉を作り、3点または4点の玉を石にかけて留める方法です。
石の周りにナナコを埋め尽くしたものをアワ留めと呼びます。
チョコ留め 基本形
お猪口にお酒が注がれている様子に似ていることから名が付きました。皿もみした穴の周りが斜めにへこんでいるのが特徴です。
皿留めとか蛇の目留めとも呼ばれます。
ふち無しチョコ留め 基本形
地金に石が埋まっているかのように、地金を彫り起こす・留めるなどの形跡がまったくわからないように留めます。
殺し留め、ドット留めとも呼ばれます。
毛彫り4点留め 基本形
毛彫りタガネを使って十文字に4箇所彫って石を留めています。インディアンジュエリーなどでよく見かけますよね。
五光留め(後光留め) 発展形
毛彫りや片切りを使って、放射状に8つの彫りデザインを入れた石留めです。
彫り留めとしてはもっとも歴史があり、この放射状の彫り跡がまるで仏様の背中に差す光明(後光)のように見えることからこの名が付いたそうです。
レモン留め
皿もみした穴に片切りタガネでレモンの形にデザインを彫って、石を留めています。
マス留め 基本形 連マス留め 発展形
石の周りを四角で区切り、その内面を片切りタガネで照り返しを彫り、石を留めています。
マス留めを規則的に並べると連マス留めになります。
一文字留め(割爪留め)
一文字留めは、アンティークジュエリーのリングによく使われています。
リングの腕部分に小粒の石が収まる石穴を横一列に開け、腕を削り出して爪となる部分を作ります。
そして、その部分を割る、または共有して石を留めていきます。
爪を割って留めたりするので、割爪留めとも呼びます。
連続彫り留め(連彫留め) 基本形
連続して並べた石の周囲を枠取りして、その内側に石留めしていく方法です。
作業は連マス留めの枠取りと一文字留めの石留めを掛け合わせた感じになります。
一列からさらに、縦横斜めと石を敷き詰めたのがパヴェとなる。
パヴェ・セッティング 発展形
パヴェは、フランス語で「石畳」「敷石」を意味します。
メレーを隙間なく、まるで宝石の石畳のように敷き詰めて留めていきます。
パヴェには、石穴の周りに爪をロウ付けした『爪留めパヴェ』(左図)か、または石穴の周りの地金を彫り起こしてそれを爪に見立てて留めていく『彫り留めパヴェ』(右図)があります。
習得するためにはとにかく体に染み込むまで数をこなしていくしかない!
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