想定制作費の求め方【地金】

ここでは地金からアクセサリーを作った場合の想定制作費の求め方を紹介します。

これを身につけることで、どのくらいの値段で作ることができるのか、作る前にある程度割り出すことができます。

さらには、この想定重量の求め方を実践していくことで、『地金の作り方の段取り』が分かるようになっていきます。

プロの彫金クリエイターは実際に作り始めるまえに頭の中で作り方の段取りを考えています。

1つのデザインを作るにしても、今までの制作経験から何通りもの作り方が思い浮かべられ、その中から今の状況にもっとも最適な作り方を選んで作っていくのです。

あなたが毎回地金からアクセサリーを作るときに、この作り方の段取りを考えてから作ることで、作り方の段取りの引き出しが増えていきます。

この作り方の段取りが増えれば増えるほど、これから先、デザインを作るときに大いに役立っていきます。

これが制作経験ってやつです。

そしていつしかオーダーを頼まれた時に、相手の求めているアクセサリーのイメージを汲み取りつつ、いろいろな作り方を提案でき、満足してもらえる接客ができるようになります。

作り方の段取り

3面図の寸法とデザインの構造を知る

3面図で寸法を知る

3面図の寸法から地金の体積を求めることで、重さを導き出すことができます。

デザインの構造を知る

このペンダントトップは、透かしをいれた地金の下にオーバーレイして厚みを増したデザイン構造になっています。

デザインの構造を理解しておけば、「このペンダントは、透かし本体の体積に透かしなし本体の体積をプラスしたデザインだな」と、実際に使う地金の量を導き出すことができます。

3面図とデザイン構造から地金の重さを知ることができれば、そのデザインがいくらで作れるのか(制作費)を導き出すことができるのです。

それでは、実際に地金の想定重量を割り出してみましょう。

想定重量を割り出す

地金の場合、まずはどんなパーツが組み合わさってそのデザインになっているのかを想像して、頭の中でパーツ毎の地金に分けていきます。

パーツ同士がどのようにロウ付けされたかを考えると分けやすいぞ。

パーツ毎に分けたら、さらにそのパーツに切り取られる前の地金板や棒の形状まで戻していきます。

そして、その板や棒になったそれぞれの地金の体積を求めて、想定重量を割り出していきます。

ポイント

これじゃ、完成したペンダントの形じゃないから正確な重量じゃないよ!っと思ったあなた!

なぜ板や棒の形状で想定重量を求めるのでしょうかね?

それは、デザインの形に切り取って出た地金の端材や削り屑は、次の制作には活かしづらいロスの地金だからです。

基本的にはこのロスの分も乗せて想定価格を算出していきます。

それぞれの体積を算出しよう

単位はすべてcm(センチメートル)に直して計算すること!

立体の体積の求め方はこちら
立体の体積の求め方一覧表

立方体・直方体 体積 = たて × 横 × 高さ 三角柱・四角柱 体積 = 底面積 × 高さ 円柱 体積 = 半径 × 半径 × 3.14 × 高さ 円錐 体積 = 半径 × 半径 × 3.14 × ...

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本体パーツの地金の体積
【立方体】たて(厚み) × 横 × 高さ
0.1 × 2.8 × 2.5  = 0.7
0.7cm³(立方センチメートル)

2つ分なので、1.4cm³

丸カンの地金の体積
【円柱】半径 × 半径 × 3.14 × 高さ
0.04 × 0.04 × 3.14 × 1.35 = 0.0067824
0.0067824cm³

バチカンの地金の体積
【立方体】たて(厚み) × 横 × 高さ
0.07 × 0.4 × 2.1  = 0.0588
0.0588cm³

本体パーツ・丸カン・バチカンの地金を合わせた体積
1.4 + 0.0067824 + 0.0588 =1.4655824
約1.466cm³

求めた体積を使って重さを求める。

重さ = 比重 × 体積

シルバー925の比重 = 10.4 なので、

本体パーツ・丸カン・バチカンの地金の想定重量 = 10.4(シルバー925の比重)× 1.466(3パーツの地金の体積)= 15.2464

約15.25gとなります。

金属の比重表

この表から作りたい金属の比重を見つけて、公式にその比重を当てはめて算出していきます。

金属 比重
ワックス 1
8.92
真鍮 8.5
シルバー(Sv925) 10.4
シルバー(Sv950) 10.5
純銀(Sv1000) 10.5
ゴールド(K10) 12.5
ゴールド(K14) 13.2
ゴールド(K18) 15.5
ゴールド(K24) 19.3
ホワイトゴールド(K14WG) 14.5
ホワイトゴールド(K18WG) 16.5
ピンクゴールド(K18PG) 15.5
プラチナ(Pt900) 20
プラチナ(Pt950) 21
プラチナ(Pt1000) 21.4

じつは、想定重量を簡単に計算できるツールを作りました。

素材選択は「ワックス」のまま、重さ(g)の欄に「求めた体積」を入力すると、「重さ = 比重 × 体積」の公式と同じ計算となり、それぞれの素材の想定重量が算出されます。

想定重量自動計算ツール

1gで作ったワックス原型をシルバー925で作ったら、何gになるのか? 10gのシルバー925の指輪を、K18で作り変えるとしたら一体何gになるのか? など、いろいろな地金の想定重量を一斉に算出できる便 ...

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制作費を割り出す。

地金を仕入れたとき、1gあたりのシルバーの値段で地金を購入しています。

井島貴金属さんでは、65円/g~80円/gです。

このように1gあたりの銀の値段をホームページ上に教えてくれていればいいのですが、通常は自分で計算して割り出さなければいけません。

購入した地金板や棒の重量を明細などで確認したり、載っていない場合には自分で算出します。

算出するには、仕入れた地金の重さと仕入れ価格が必要です。

1gあたりの地金の値段 = 仕入れ価格 ÷ 地金の重さ

これで1gあたりの地金の値段が算出できるので、ここに先ほど求めた本体パーツ・丸カン・バチカンの地金の想定重量をかけてあげます。

1g/70円 × 15.25(g) = 1067.5

1068円

ペンダントトップを作るときの制作費は、1068円になります。

 

必須アイテム

デジタルスケール(携帯タイプ)

地金&WAX兼用

地金やワックスの重さを量る以外にも、宝石のカラットを調べる時にも使います。
以下の3点があるデジタルスケールを購入すること。

  1. 0.01g単位で計測できるもの
  2. ct(カラット)測定が出来るもの
  3. 容器を置いてその重量を省いて0gから計測できるもの

金額を割り出すにあたり、絶対に必要となるアイテムです。