第5話 今を変えない限り、未来が変わることはない
今日はガウディが特別講師として、ここ彫金アカデミアにやってきていた。
教壇の前に立ったガウディはカルマと目が合うと、ニッコリと笑いウインクをおくり、喋りだした。。
ガウディ
「こんにちは。ガウディじゃ、よろしく。」
「ワシは元々は人間なんで、人間なりの観点で今日はおしゃべりしようと思っている。」
そう言うと、ガウディはそばにある椅子に腰掛けた。
ガウディ
「本来、人間はなまけものなんじゃよ。」
「ワシも日々、自分自身のなまけ心と戦っとる。」
「いかに今の自分を奮い立たせられるかで、今後の未来が変わってくることじゃろう。」
「当たり前じゃが、”今を変えない限り、未来が変わることはない” のじゃ。」
「それじゃあ一体、未来を変えるため、今変えるべきこと、やるべきこととはなんじゃろうか。」
「そなたたちに、今日から意識してほしい3つのことを話すとしよう。」
集中できる環境は大事じゃぞ!
集中して学びたいなら、周りにある雑念を引き起こすようなものは極力排除することじゃ。
例えば、自分の作業場を想像してみてくれ。
視界の入るところに雑念を生み出すトラップがあちこち仕掛けられていないかな。
スマホや関係のない雑誌や週刊誌、今は必要のない工具などじゃ。
このような作業場が想像できたなら、そやつは ”雑念のワナ” にすぐに引っかかっちまうな。
作業を始めた矢先、
『スマホゲームのクエスト、今日中に消化しないとな~』
『着信音が鳴ったけど、なんだろう?』
『そういえば雑誌の記事、読みかけだったな~』
『それにしても汚い!そろそろ部屋の掃除しないとな~』
こんなふうに、作業中、散らばっているモノが視界に入るたびに、頭の中でいろいろな思念が浮んできてしまうんじゃ。
これでは、作業に集中することなんて出来やしないじゃろ。
頭は一度にいろいろなことを考えると、疲れてしまうんじゃ。
同時にすべての考えを処理することは、難しいんじゃな。
考えることがたくさんあればあるほど、エネルギーが分散されていってしまう。
そして、余計なものにまでエネルギーを消費してしまい、やるべき重要なことに注ぐだけの十分なエネルギーが足りなくなっちまうんじゃぞ。
『今日はなんか疲れたな~、なんか気分が乗らないな~・・・明日やればいいかな。』
こんな気持ちになってしまうのは、それはもうエネルギー切れの状態なんじゃよ。
それでな、「やらなきゃ、やらなきゃ」と思いつつも出来ていない日が続くだろ、するとそんな現実と向き合うのが辛くなって、そのこと自体の興味が薄れていくんだな。
そして、フェードアウトじゃ。
『私は何をやっても長続きしない性格なんです。』
あれもな、意志が弱いなんていう問題じゃなく、単純にエネルギーのガス欠なんじゃよ。
今日一日のやることが一杯ありすぎて、新しく始めようと思う事にまでエネルギーが残こせていないんじゃな。
それじゃあ、エネルギー切れにならないようにするためには、どうしたらいいのかじゃ。
まずは手始めに、身の回りをスッキリと整理して、作業中に気が散るようなモノが目に映りこまないようにすることからはじめてみてはどうかな。
あとは、作業中はスマホを見ないようにしたり、使ったものはその日のうちにあるべき場所に戻すようにすることじゃ。
これだけでもエネルギーの節約はできるぞい。
理屈よりも行動を取れ!
なにかを覚えるとき、ワシはとにかくやりながら覚えることにしているんじゃ。
かといって何も分からないまま始めるのはダメじゃぞ。
覚えるのが遅くなるし、わからなすぎるとつまらなくなっちまう。
取説などがあれば、まずは軽く目を通す。
でもさらっと見て始めるんじゃ。
そして、わからない事が出てきたときに、はじめてその部分の説明をじっくり読み込むのじゃな。
人間は疑問が沸いてからの方が、頭に入りやすく、かえってその方が早く覚えられるようにできているんじゃよ。
それが覚えるための一番の近道だとワシは信じておる。
ただし、自己流になるのは軽率じゃぞ。
疑問に思ったことはなあなあにせず、立ち止まって自分なりの答えを見つけてから次に進むことじゃ。
やりながらでいいから分からないことは素直に認め、愚直に学び、そして行動に移す。
頭や体に染み込むまでは、この繰り返しなんじゃ。
ここんところをおろそかにしちゃいかんぞ!
はじめは分からないながら、あれこれ試してみる。
そして、後から何度も何度もじっくりと取説などの解説書を読み込むんじゃ。
皆、逆なんじゃよ、やることが・・・
始めにじっくりと読み込みすぎて、それでお腹いっぱいになって満足してないかな?
生きたニューロの使い道
そなたたちは生きたお金を使っているかい?
あっ!いやいや、ここではお金は、ニューロじゃったな。
スポーツを始めたいなら、ルールブックや道具を手に入れるはずじゃ。
本気でダイエットしたいなら、関連本や器具を手に入れたり、美味しい料理を作りたいなら、料理本や便利な調理器具が欲しいと思うじゃろう。
彫金を本気で始めたい、ゆくゆくはビジネスにしていきたいと考えているのであれば、その達人や先駆者が薦める知識や道具を使ってスキルを磨く方が、賢いやり方だと思うんじゃ。
だから、そなたたちはこのアカデミアに学びにきたんじゃろ。
これこそ生きたニューロの使い道、未来への投資だと思わんか。
しかしな、どうも周りを見てみるとな、自分を成長させる知識や道具だってのが分かっていながら、手に入れることに慎重すぎるというのか、やけに消極的だったりするんじゃな~、これが。
そのくせ呑みや遊びともなると、パア~っと積極的に使っちまったりする。
そりゃワシも呑む事も遊ぶことも大好きじゃよ、時には生きたお金に変わることだってある。
でもな、今のそなたたちにとって、それが本当に生きたお金・・・・
いやいや、生きたニューロの使い道なのかじゃ。
はじめにも話したじゃろ、”今を変えない限り、未来が変わることはない” のじゃ。
最優先するべき使い道は、どっちじゃ?
知識や道具を手に入れてスキルを習得する時間?それとも、呑み友達や遊び友達と過ごす時間かい?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「よっこらしょっと」
ガウディは椅子から立ち上がった。
「さあ、どうじゃったかな。」
「今までの話をまとめるとな、要は、
”身の回りを整理して、行動力をもって知識を獲得し、自分の信ずる道には迷いなく投資しろ!"
ってことじゃ。」
「このことを常日頃から意識して、少しずつでいいから今の自分の現状を自らの手で変えていくことじゃな。」
「さすれば、ちがった未来も見えてくるじゃろう。」
「最後にそなたたちに課題を渡そうかのう。」
「この後今すぐやってもらいたいのじゃ。」
自分の身に周りをキレイに掃除するんじゃ。」
「ただし、掃除の時間は30分間」
「スマホなどでタイマーをセットして始めてくれ。」
「じゃあ、今日の講義はこれで終わりじゃ。」
「はあ~、喉がカラカラじゃよ。」
そう言ってガウディは教室を出ていった。